最高裁判所第二小法廷 昭和38年(オ)776号 判決 1966年5月20日
上告人 バカンダス・ムクラーデ・ジヤベリ
被上告人 東京法務局長
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人馬場正夫の上告理由について。
論旨は、未登記建物の所有者が、旧家屋台帳法(昭和二二年法律第三一号)により建物の登録を申告するにあたり、申告書には当該家屋の敷地の所有者または管理者の連署を受けさせるかまたはそれらの者の承諾書を添附させるものとし、もしその連署または承諾書が得られないときは、その理由書を添附させるものとした法務省民事局長通達「家屋台帳事務取扱要領」第七一をもつて、敷地使用の権原のないのにかかわらず家屋建築の敢行されることを絶対に抑制する目的に出でたものとし、家屋の登録申告者の敷地使用の権原が明らかでないかぎり、右申告書の受理および家屋台帳への登録は許されず、もし誤つて登録されたときは、職権をもつて抹消せらるべきものと主張する。
しかし、家屋台帳は現に存在する各家屋の所在、構造、大小、使用目的等家屋の状況を明確にするための公簿として設けられていたものであり、前示通達第七一は、未登記家屋の登録申告について申告者に当該家屋の所有者たることの証明義務を認めた関係上(昭和二五年法務府令第八九号家屋台帳法施行細則五条四項参照)、家屋所有の証明手段として申告者に対し、その申告書に家屋敷地の所有者または管理者の連署を受けさせ、あるいはその承諾書の添附を要求すべき旨を定めたものにとどまると解するのを相当とする。そして右通達は、家屋台帳登録に関する執務基準を示した訓令にすぎず、また家屋台帳制度はその登録事項が実状に適合するならばその目的は達せられるものであることにかんがみれば、所論のような申告手続における通達違反をもつて、登録申告書の受理ないし家屋台帳登録につき、その処分の取消または無効に値する瑕疵を生ずるものと解することは到底許されない。してみれば、本件家屋台帳登録の暇癖理由として右登録に基づいてなされた家屋所有権の保存登記等を不動産登記法四九条二号に該当するものとする、上告人の主張を排斥した原判決は正当であつて、論旨は理由がない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判官 奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)
上告理由書<省略>